プロジェクト担当インタビュー
理事
塚原 成利
日本初の官民一体のまちづくり
としまエコミューゼタウン
Profile
勤続年数 | 36年 |
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役職 | 理事 |
業務内容 | 開発系:市街地再開発事業、防災街区整備事業、マンション建替事業など |
保有資格 | 一級建築士 |
どんな学生でしたか? | |
私は建築学科だったので、設計課題などに追われた4年間でしたが、バブル真っ盛りということもありよく友達と遊びにも行きましたね。特に、男3人で行った卒業旅行のヨーロッパは一番刺激を受けました。 |
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建設部
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プレハブ住宅部
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住宅金融公庫出向
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再開発部
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プロジェクト推進部
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事業開発部
まちづくり推進部兼務
そこで生活する人を守る
燃えないまちづくり
入社した当初は、建設部に配属になり地主の方が賃貸マンションを建設する際のお手伝いをしていました。その後いくつかの部署を経て、当時の住宅金融公庫に出向し、戻ってから再開発の仕事に携わるようになりました。私自身、ダムや橋など大きな建造物をつくる土木の仕事に憧れていましたが、大学で学ぶうちに建築もおもしろいと思うようになり当社へ入社しました。
もともと当社は火災、震災などの災害から都市を守るため、建物の不燃化と都市の再開発を推進することを目的に設立された公益法人でした。東京都で第一号の組合施行での市街地再開発事業も当社が手掛けました。また今年は関東大震災からちょうど100年となりますが、当時、震災復興住宅であった同潤会アパートの建て替えは、私たちのライフワークでもあります。同潤会アパートといえば、表参道や代官山などが有名ですが、それ以外も含めて16地区あるうちの6地区(約4割)は当社が建て替えを行い、また下町で地権者が多く建て替えが困難な地区なども多く担当しています。2013年の公益法人制度改革に伴い、一般財団法人(非営利型)に移行しましたが、利潤だけでなく社会貢献に寄与していくそのスタンスは今も変わりありません。
地権者を支え、生活再建を念頭においた再開発を
現在は、事業開発部とまちづくり推進部を兼務しています。長く仕事をしていると地権者の方からいろいろな相談を受けることも多いですね。この仕事のやりがいは、建物を造るだけではなく地権者の方にやってよかったと感謝されたり、人とのつながりができることだと思っています。初動期には小さなお子さんだった地権者のご家族が、高校生や大学生になっていて成長した姿をみると、大きくなったなぁと、まるで親戚のような感覚になります(笑)。
何もないところにマンションを建てるのは簡単ですが、そこで生活している方や商売をされている方がいらっしゃって、その方々の同意を得ながら、一旦そこから出ていただいて、壊して、新しいものを建てて、戻ってきてもらう。それぞれの方の生活再建を考えながら、夢のある計画にしていく、それが再開発の一番大変なところです。これまでの生活が変わるわけですから、もちろん慎重な方や不安を感じる方もいます。ですから、一朝一夕にとはいきません。
事業を進めていく際には、それぞれの生活や思い、お一人おひとりに丁寧に寄り添って話をしていきます。またできる限りみなさんの声を反映できるよう知恵を出し合い努力もします。幸いなことに、当社ではまだありませんが、再開発では地権者の方の同意が得られず頓挫するプロジェクトがあるのもまた事実です。当社がこれまで数々の事業を進めてこられたのは、社名に「不燃」という言葉が入っているように、災害に強い燃えないまちをつくり、地権者の方々の生活を守るために建て替えを行ってきたからだと思っています。
日本初の官民一体となった再開発事業
池袋駅に程近く、環状線が横を走る台地に「としまエコミューゼタウン」はあります。
豊島区役所の老朽化に伴う庁舎の建て替え移転と、市街地の更新という課題を解決するため、下層部に庁舎、上層部には住宅という官民一体となって取り組んだ日本初の再開発事業です。エコミューゼタウンとは、公募で選ばれた名称で、エコロコジー(環境)とミュージアム(博物館)をあわせた造語に、人々が集う街「タウン」となることを願って名づけられ、その名にふさわしく他に類をみない未来型の再開発となりました。
2003年頃から、この地区の地権者の方々は、自主的に地域再生を目指した勉強会を開催していました。
当社は、もともと木密地域の不燃化「災害に強い快適なまちづくり」を目指し、様々な地区の再開発に携わってきました。こちらの地区を担当する以前にも、同潤会アパートなど、地権者の多い市街地再開発事業をまとめてきた実績をかわれて、私たちに相談があったのです。
当時、この地区では都市計画道路で長期にわたって未整備のままだった幅30mもある都道環状線の工事が進むことになり、周辺地域では、沿道だけの乱開発が進んでそれ以外の地区については置き去りにされるのではないかという不安を抱えていたのです。
しかし、その後、庁舎の建て替えを検討していた豊島区が準備組合にも参加し、一緒に再開発に取り組むことが現実味を帯びてきたことにより事業は段々と進みはじめました。初動期からすると12年という長いプロジェクトになりましたが、数々の賞を受賞するなど、市街地再開発を代表する事業となりました。
この事業においては、豊島区は新たな財政支出なしで新庁舎を整備するスキームを活用し、設計は、日本を代表する建築家や人と自然をつなげる景観デザインの専門家などにも加わってもらったことで、当初より目標に掲げられていた未来志向の「環境庁舎」を実現することができました。
この地の地形になぞらえて階段状に設計された下層部には、庁舎が入るとともに、豊島区の生態系を再現した屋上庭園「豊島の森」や「エコミューゼ」を整備し、区民の誰もが集え、多様な自然と触れあえる開かれた空間になっています。また建物の周囲を「エコヴェール」というリーフに見立てたパネルで覆うことで環境負荷を軽減するしくみなど、様々なエコの試みがなされました。また、災害時に防災拠点となる「庁舎」は、耐震が最も高い基準で設定されています。さらに庁舎の機能面・安全性を確保するため、上層部の住宅と庁舎のインフラをそれぞれに分け、「庁舎」の公益性・公共性を保ちながら住民にとっては安心して暮らせる防犯性の高い建物になりました。下層部のフロアに保育園やクリニックモールなどを誘致することで、地域住民の利便性も向上しました。
最終的に、様々な人々の力を結集した素晴らしいプロジェクトとなりましたが、それもこのまちの未来を想い動き出し、考え続けてきた住民の方々の努力があったからこそ。
振り返ってみるとプロジェクトが始まったころには、なかなかお話しすらできなかった地権者の方とも長い時間をかけて真摯に取り組んできたことで、信頼関係を築くことができ、完成後に「やってよかった」と言われたのがやはり一番うれしかったです。もちろん建物として残るので達成感もあります。けれど、竣工してからが本当のまちづくりのスタートです。これからも10年、20年先のまちづくりを見据えた再開発をそこに暮らす人々とともに取り組んでいきたいと考えています。
南池袋二丁目A地区
区立小学校跡地等の公有地と民有地において、
区本庁舎と分譲マンションを一体整備した日本初の事業。
- 事業地区
- 南池袋二丁目A地区
- 地区面積
- 1.0ha
- 敷地面積
- 8,324㎡
- 所在地
- 東京都豊島区南池袋2丁目45ー1
- 事業期間
- H21年~H28年
- 関係権利者
- 127名
- 物件名
- としまエコミューゼタウン
- 建物延面積
- 94,681㎡
- 規模
- 49階
- 建物用途
- 住宅(432戸)・庁舎・店舗・事務所
Gallery
プロジェクトを終えて
少子高齢化が進み、さらには災害の多いこの日本で、再開発によるまちづくりを進める意味は重要性を増しているように思います。もっと知見を深め、人々が安心して暮らせるまちをつくっていきたいですね。マンションのように住宅が高層化されても、人と人とがつながるまちづくりはできる。保育園や小学校、老人ホームが一緒にあって、お年寄りが子どもたちに読み聞かせをしたり、子どもたちと一緒に遊べたりしたら、お互いにいい効果があるのではないでしょうか。起業する人を応援するチャレンジショップのある商店街をつくったり、若い人が集まってくるようなテーマ性をもたせたまちづくりもおもしろいかもしれません。これからも、建て替える・新しくするだけではなく、人々の暮らしを豊かにする前例のないまちづくりにチャレンジしていきたいと思っています。
※本ページの内容は取材当時のものです。
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